人と動物の両方に感染する人獣共通感染症。家畜や野生動物、魚介類、昆虫など様々な動物を介して感染する病です。
SARSや鳥インフルエンザなど、ニュースで報じられる人獣共通感染症はペットではなく、あまりイメージがつかないかもしれません。でも、ペットとして飼育する動物から感染する可能性は十分あります。
今回は、人獣共通感染症の概要とペットととして飼育する動物で気をつけたほうが良い人獣共通感染症、そして予防対策をご紹介します。
人獣共通感染症とは?
人獣共通感染症とはヒトとそれ以外の脊椎動物の両方に感染または寄生する病原体により生じる感染症のこと人獣共通感染症 – Wikipedia
と定義されています。
動物由来感染症やズーノーシス(zoonosis)とも呼ばれます。ちなみに、ズーノーシスはzoon(動物の)+osis(病気)という造語です。
上記のように脊椎動物と定義されているものの、同じ病原体で人と動物両方がかかる感染症だけでなく、昆虫など無脊椎動物を媒介として感染動物から人間に感染するケースも人獣共通感染症に含まれます。(蚊を媒介としたデング熱など)
ですから、人獣共通感染症は非常に種類が多く、WHO(世界保健機関)が把握しているもので200種類以上あります。
主な人獣共通感染症
誰もが一度は耳にしたことがあるような、有名どころをご紹介します。
狂犬病
狂犬病は、狂犬病ウイルスを病原体とする人獣共通感染症です。その症状から、恐水症とも呼ばれています。まだ治療法が確立されておらず、発症するとほぼ確実に感染者は死亡。そのため、ギネス世界記録に「最も致死率が高い病気」として登録されています。
狂犬病は人から人へは基本的には感染せず、主に人への感染は感染している犬に噛まれた場合です。ただ、犬にかぎらず猫などすべての哺乳類に感染します。
日本では狂犬病予防法で犬の登録と予防注射が義務化されており、国内の動物での流行は昭和32年以降確認されていません。ただ、海外では現在でも発症事例も多く、日本人でも海外で犬に噛まれて帰国後に発症、死亡した事例があります。
SARS(重症急性呼吸器症候群、新型肺炎)
SARSは2002年から2003年に感染拡大したSARSコロナウイルスによる感染症。当時は連日ニュースで取り上げられていたので、ご存じの方は多いのではないでしょうか。
中国からはじまり、香港、台湾など東アジア圏を中心に、ドイツ、フランスなど欧州圏、アメリカなど世界各地に拡大、発症者8,000人以上、死者800人弱(WHO発表による)。
SARSの発生源は、当初ハクビシンと言われていましたが、現在では発生源はキクガシラコウモリという説が有力とされています。
鳥インフルエンザ
鳥インフルエンザは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染する鳥類の感染症。
日本では発症したケースはありませんし、そもそも大量のウイルスに接触しないかぎりは人への感染はしないと言われています。
ただ、鳥インフルエンザ自体がアジア圏を中心に世界的に発生していますし、日本国内でも定期的にニュースで流れています。また、中国やベトナムなどで人への感染、死亡事例も。
また、A型インフルエンザウイルスは人に感染するものは少ないものの、内部で変異するタイプが多い特徴があります。鳥インフルエンザも人の間で感染する新型インフルエンザウイルスに変異し、流行するのではないかという懸念があります。
ペットとして飼育する動物で気をつけたい人獣共通感染症
日本では輸入届出や人獣共通感染症に感染する可能性のある動物は輸入検疫や輸入禁止といった対策をおこなっており、世界的に見ればかなり少ないほうです。それでも日本国内でも数十種類あると言われています。
犬や猫などペットとして飼育する動物で気をつけたい人獣共通感染症とは何なのでしょうか。主だったところをご紹介します。
Q熱
Q熱コクシエラを病原体として、犬や猫から感染します。動物も人も感染しても多くは発症しませんが、発症すると風邪やインフルエンザに似た症状が出ます。重症化するケースもあります。
オウム病
オウム病クラミジアを病原体として、オウムやインコなど鳥類から感染します。動物は無症状のことも多いですが、人が感染した場合は風邪ににた症状が出ます。
猫ひっかき病
バルトネラを病原体として、猫から感染。名前のとおり、ひっかき傷や噛み傷で感染します。猫は無症状で、人が感染すると傷口が化膿したり、高熱が出たります。
サルモネラ症
サルモネラを病原体として、ヘビやカメなど爬虫類、犬、猫、鳥類など多くのペットから感染する可能性があります。特に、カメの保菌率が高いです。感染すると、発熱や下痢、嘔吐などの急性胃腸炎を発症します。
皮膚糸状菌症
糸状菌というカビの一種を病原体として、犬や猫から感染します。症状は様々ですが、動物と人ともに毛が抜けたり、かゆみが出たり、水疱ができたりします。
かいせん症
かいせん虫(ヒゼンダニ)を病原体として、犬や猫から感染します。動物と人ともに毛が抜けたり、かゆみが出たり、かさぶたができたりします。
感染の予防対策
ペットに定期健診を受けさせる
人獣共通感染症は、人と動物と同じ症状が出るとはかぎりません。飼っているペットはほとんど症状が出ないことも多いので、自分で気づくのは難しいです。
そのため、定期的に病院で診察を受けるようにして、病気の早期発見を心がけると良いです。
衛生管理をして清潔を保つ
日常的な衛生管理にも気をつけるようにしましょう。
例えば、ダニを介して飼っている犬から感染することもありえるので、定期的に洗うなどして清潔を保ってください。ペット自身だけでなく、ペットの住処も糞尿をこまめに片付けるなど、きれいにすることをお忘れなく。
過剰に接しない&触ったあとは手洗いをする
口を舐めさせるとか、口移しでエサをあげるとか、食器を一緒に使うとか。ペットの口の中にウイルスがいる可能性があるので、こういう過剰な触れ合いは避けるようにしましょう。
また、そこまでしなかったとしても、犬や猫が舐めた手を使って食事をすれば感染するかもしれませんので、基本的にペットを触ったら手洗いしなければいけません。
飼育している部屋の換気をする
室内でペットを飼っていると、糞尿が乾燥して空気中にまぎれ、空気感染してしまう可能性があります。ですから、部屋の換気をおこなって、定期的に空気を入れ替えるようにしましょう。
これは小動物や鳥類を飼育している場合に特に気をつけたほうが良いです。